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前橋地方裁判所 平成6年(わ)349号 判決

本籍

群馬県北群馬郡吉岡町大字上野田二一〇九番地

住居

右同所

会社役員

清水洋

昭和一七年三月三一日生

本籍

群馬県北群馬吉岡町大字上野田二一〇九番地

住居

右同所

会社役員

清水ちい子

昭和二三年一月二〇日生

右両名に対する各所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官木村匡良出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人清水洋を懲役一年及び罰金一五〇〇万円に、被告人清水ちい子を懲役一年に処する。

被告人清水洋において右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

被告人両名に対しこの判決確定の日から三年間右各懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人清水洋は、群馬県北群馬郡吉岡町大字上野田地内において、「夫婦石」の名称でうどん店を、「珍宝館」の名称で展示場を営んでいたものであり、被告人清水ちい子は、事業専従者として右事業の経理全般を管理していたものであるが、被告人両名は共謀の上、被告人清水洋の所得税を免れようと企て、売上を除外するなどの方法により所得を秘匿した上、

第一  平成二年分の実際総所得金額が三六六五万三〇九一円であったのに、平成三年三月五日、同県高崎市所在の所轄高崎税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が四〇七万〇〇五〇円であり、これに対する所得税額が一四万九二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、右不正の行為により、同年分の正規の所得税額一三一三万円と右申告税額との差額一二九八万〇八〇〇円を免れ、

第二  平成三年分の実際総所得金額が四三九一万〇二九一円であったのに、平成四年二月二〇日、前記高崎税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が七二七万三二一七円であり、これに対する所得税額が五二万五八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、右不正の行為により、同年分の正規の所得税額一六八三万三〇〇〇円と右申告税額との差額一六三〇万七二〇〇円を免れ、

第三  平成四年分の実際総所得金額が六〇五一万九〇七四円であったのに、平成五年三月九日、前記高崎税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が一一五九万二一六八円であり、これに対する所得税額が一七八万五九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、右不正の行為により、同年分の正規の所得税額二五〇〇万七五〇〇円と右申告税額との差額二三二二万一六〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人両名の当公判廷における供述

一  被告人清水洋の検察官(平成六年九月二七日付(四丁のもの)、同年一〇月三日付、同月四日付、同月五日付、同月六日付(七丁のもの)、同月一〇日付二通、同月一一日付及び同月一二日付)に対する各供述調書

一  被告人清水ちい子の検察官(平成六年九月二八日付け、同年一〇月四日付二通、同月六日付(五丁のもの)、同月九日付二通(五丁のもの、四丁のもの)、同月一〇日付及び同月一一日付)に対する各供述調書

一  岩崎栄作成の回答書

一  大蔵事務官作成の次の各調査書

1  収入調査書

2  仕入調査書

3  租税公課調査書

4  水道光熱費調査書

5  通信費調査書

6  広告宣伝費調査書

7  接待交際費調査書

8  損害保険料調査書

9  修繕費調査書

10  消耗品費調査書

11  福利厚生費調査書

12  給料賃金調査書

13  減価償却費調査書

14  利子割引料調査書

15  雑費調査書

16  支払手数料調査書

17  除去損調査書

18  事業専従者控除調査書

19  預金調査書

判示第一及び第二の各事実について

一  大蔵事務官作成の査察官報告書

一  被告人清水洋の検察官(平成六年一〇月九日付)に対する供述調書

一  被告人清水ちい子の検察官(平成六年一〇月九日付、九丁のもの)に対する供述調書

判示第一の事実について

一  被告人清水洋の検察官(平成六年一〇月七日付「平成二年」で始まるもの及び同月八日付)に対する各供述調書

一  被告人清水ちい子の検察官(平成六年一〇月七日付及び同月八日付(一一丁のもの))に対する各供述調書

判示第二の事実について

一  被告人清水洋の検察官(平成六年一〇月六日付(四丁のもの)及び同月七日付「平成三年」で始まるもの)に対する各供述調書

一  被告人清水ちい子の検察官(平成六年一〇月六日付(四丁のもの)及び同月八日付(八丁のもの))に対する各供述調書

判示第三の事実について

一  被告人清水洋の検察官(平成六年一〇月一日付及び同月二日付)に対する各供述調書

一  被告人清水ちい子の検察官(平成六年一〇月一日付及び同月二日付)に対する各供述調書

(法令の適用)

被告人清水洋の判示各所為は、各事業年度ごとに刑法六〇条、所得税法二三八条に該当し、被告人清水ちい子の判示各所為は、各事業年度ごとに刑法六五条一項、六〇条、所得税法二三八条に該当するところ、被告人清水洋については所定刑中懲役刑と罰金刑を併科し、被告人清水ちい子については懲役刑のみを科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、被告人両名の懲役刑については同法四七条本文、一〇条により、犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、被告人清水洋の罰金刑については同法四八条二項により判示第一、第二及び第三の各罪所定の罰金を合算し、その刑期及び合算額の範囲内で被告人清水洋を懲役一年及び罰金一五〇〇万円に、被告人清水ちい子を懲役一年にそれぞれ処し、被告人清水洋については右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、被告人両名に対し情状により同法二五条一項を適用して、この裁判確定の日から三年間右各懲役刑の執行を猶予することする。

(量刑の理由)

本件は、被告人両名が共謀の上、被告人清水洋の所得を秘匿して、三事業年度の所得税につき虚偽の過少申告をし、合計五二五〇万九六〇〇円の所得税をほ脱したというものである。

本件におけるほ脱税率は平成二年が九八・八六パーセント、同三年が九六・八七パーセント、同四年が九二・八五パーセントという著しい高率であって、このような被告人両名の行為は税負担の公平感を害し、納税者の納税意欲を阻害し、ひいては、国家の財政的基盤を危うくしかねないものであって、その刑事責任は重いといわなければならないが、被告人両名において、本件犯行について反省する態度が認められること、被告人清水洋は本件犯行につき修正申告を済ませている上、今後については法人化した各事業の経理を税理士に依頼することとし、二度と本件のような犯行を起こさないと公判廷で述べていることなど被告人両名に有利な諸事情も存在するので、これらの諸事情を勘案して主文掲記の期間各懲役刑についてはその刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 沼里豊滋)

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